ストーブの点火 |
ものの本にはたき付けを井桁に何段も組む、着火剤を使う、新聞紙をぎっしり詰める、などとありますが、そんなに苦労しなくても、ちょっとしたコツで点火は素早く簡単にできます。
私が子供の頃、祖父から教わった「マクラ」を使うやり方を。ただし、当時はカマドでしたが…。 |
準備 |
用意するのは焚きつけ(小割)2-3本と中薪(手首ほどの太さ)1本、それにてのひらサイズのガンピ。ガンピとは北海道方言でシラカンバの樹皮。もしなければ、丸めた新聞紙1ページ分でもかまいません。 |
置き方 |
中薪をストーブ内の端に置きます。私は右利きなので左端に。長かったら斜めでもかまいません。これが「マクラ」です。マクラに沿うようにガンピか丸めた新聞紙を置きます。ガンピは丸めたり、折ったりして、なるべく空間を作ります。その上に焚きつけを2-3本載せます。マクラと焚きつけでできた三角スペースの中に、ガンピが収まる感じです。 |
マクラとガンピを置く |
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着火
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ストーブの空気取り入れを最大に開け、ガンピに点火します。扉は少し開けておきます。吸い込みのいい煙突なら扉全開で見ていてもいいですね。ガンピが燃え上がり、焚きつけが角から燃え始めます。 |
焚きつけを載せガンピに点火 |
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火が安定したら、焚きつけの上に中薪を載せます。このとき、焚きつけより少し角度をずらし、空気が通りやすくします。マクラがあるので安定して載せられます。ここまで点火から3分ほどです。
実は、最初から中薪を2本ほど載せて点火してもかまいません。慣れるとこのほうが時間の節約になります。点火後15分ほどして見に来ると、中薪がぼうぼう燃えている、という案配です。
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載せた中薪にも火が移る。
ここまで点火から3分 |
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安定燃焼 |
中薪がしっかり燃え始めたら、適宜、薪を追加し、ストーブの温度を上げていきます。わが家は触媒付きのストーブなので、温度を見ながら30分後くらいにダンパーを閉じます。温度計もありますが、ストーブの足に触って温度を感じるのも意外と正確です。あまり急に温度を上げると、ストーブに熱膨張のひずみが生じ、寿命を縮めます。細く軽い薪は温度が上がりやすく、太く重い薪はゆっくりです。 |
太い薪を載せ安定燃焼へ。
マクラはまだ健在 |
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理屈 |
燃焼には空気が必須で、熱は上に上がります。マクラは空気の流通経路を確保し、焚きつけが燃えた熱を上部の薪に伝える役目をします。マクラ自体はストーブ底面や灰に接しているので燃えにくく、かなり長く焚きつけや薪を支えてくれるのです。
太い薪に比べ中薪やたき付けは作るのに手間がかかります。その消費を減らし、着火時間を減らすのが、無理をしない薪暮らしのコツです。 |
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薪は3種類用意する |
太い薪に点火しようとして苦労している人を見かけます。重い塊である木は、けっこう燃えにくいものです。小割りして空気に触れる面積を増やさないと、うまく燃えません。直径10センチほどの太薪のほか、手首ほどの太さの中薪、さらに細く3-5センチに割った焚きつけの3種類を用意すると、着火がスムーズにいきます。 |
焚きつけ材料 |
焚きつけといっても、太薪の一部を手斧などで割るだけです。樹種は軽くて割りやすいものを。特にシラカンバは早く乾いて燃えやすく、おき(熾)になるのも早いので、焚きつけや中薪として最高です。おまけに着火剤になるガンピまでついてくる。私はカバ薪をより分けて樹皮を保存し、材を小割りしています。
その他、割りやすいトドマツ、ハンノキなどが向いています。堅く燃えにくいナラやイタヤは、太薪で使ってください。森のいろんな樹種をうまく使い分けるのがコツです。 |
シラカンバ薪。よく燃える上、
ガンピ(樹皮)は最高の着火剤 |
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焚きつけ作り |
ナタは鋭いけれど軽いので、太い薪は割るのに苦労します。手斧が向いています。薪の木口(こぐち=切断面)に手斧の下端を少し食い込ませ、トンと薪ごと振り下ろすと狙った場所が割れます。
焚きつけの割り方にコツが一つあります。木口が四角ではなく、三角形になるように割る、ということです。木口が四角くなった小割は、もう一回、対角線に割ると三角になりますね。こうすると薄い角ができ、とても着火しやすくなるのです。
あるお宅で、電動薪割り機を使って小割しているのを見ました。お父さんが斧を振り、子供たちが電動薪割りで焚きつけを次々と作る。ゆっくり動いて安全な電動型のうまい使い方だと思いました。 |
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焚きつけを割るときは手斧の
下端を軽く食い込ませてから |
焚きつけは三角に割る |
手斧2種と薪割り斧 |
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焚きつけ作りのコツ |
最近なぜか、「焚きつけ」がほしい、という要望をいただきます。
慣れないうちはどう作るか見当がつかず、途方に暮れてしまうのでしょうか。やってみると意外に簡単で、手斧と割り台があれば玄関先などでもできます。
薪を購入している方でも、焚き付けは自分で、という方も多いと思います。ここでは、一般的な1本ずつ割る方法のほか、一気に大量の焚き付けを作る方法をご紹介します。 |
用意するものは、古タイヤと中型の斧です。タイヤは軽自動車用のほうが軽くて扱いやすいです。
丸太は20-30センチ前後の短めに玉切りしてあったほうが、焚き付けには向きます。
古タイヤを厚板の上に載せ、中央のホイール部に丸太を詰め込みます。半割りしたのも使って、ぎっしり動かないように詰めるのがコツです。
下に敷く厚板は、斧の刃先がいたまないようにするためなので、ベニヤ板でも何でも。土や雪の上なら不要です。
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準備ができたら、いよいよ斧を振ります。あまり力を入れず、しっかり狙いをつけましょう。振り下ろすたびに丸太が割れますが、タイヤのおかげで飛びません。面白いように割れていきます。斧を手に、タイヤの周りをぐるぐる回り、いろんな方向から丸太を割るのがコツです。
斧は、できれば軽めの切れ味のいいタイプが向いています。私はフィスカースX25を愛用しています。 |
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焚き付けに向くのは、シラカンバやハンノキなどの割りやすくて軽い樹種です。よく乾き、すぐ火がついて、早く「おき」になります。トドマツも乾きが早いので使えます。枝などが合って割りづらい時は、無理しないで中薪にしましょう。
自分で玉切りする方は、こういう樹種を短めに切っておきます。買った薪なら太い薪から短く軽いものを選びます。いい焚き付けがあると、寒い朝の着火が楽になります。
古タイヤを使う方法は、丸太が飛ばないので通常の薪割りでも重宝します。軽自動車用で少し幅広タイプがあると楽です。 |
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中薪 |
中薪の役割は、焚きつけの火を素早く受けて燃焼を安定させることと、早く熾(おき)になってストーブを暖めることとの二つです。二次燃焼型のストーブは、ストーブが暖まっているときに、最適の空気供給と燃焼が行われます。そのためには、ここでもあまり重い薪ではなく、軽めの樹種が向いています。よく乾いた、割りやすそうな薪を選んで割っておきます。 |
太薪 |
太薪は安定燃焼期に燃やすもの。乾燥していれば、樹種はほぼ何でもOKです。重いミズナラやイタヤカエデは、ゆっくり燃え、長く熱を出します。シナノキやハンノキはあっさり燃えてしまいます。カラマツはすぐ熱を出す印象があります。
ナラなどの枝節や根っこの部分は密度が高いので、燃えるのに時間がかかります。割る時に苦労させられた変形薪を見つけ、寝る前の1本、「頼んだよ」とストーブに入れるのも、薪割り人の密かな楽しみです。 |